エグザイルスギャング〜アウトサイダーの幸福論
Posted on by narita
エグザイルス・ギャング
20代の時にこの「エグザイルス・ギャング」という本に出会えたのは幸運だった。
なぜか実家の地区にある図書館にこのようなタイトルの本があり、
背表紙に惹かれて読むことにした。
エグザイルというと昨今は著名な歌謡グループが思い起こされるが当時はそうではなく、ハードボイルド小説なのか?というくらいの気持ちで手に取った。
EXILESとは「追放された者、放浪する者」という意味で、これはそんな行く末を知らぬものになるための心得ともいうべき本だ。
内容としてはロバートハリスというクォーターの英語講師、ラジオDJが半生を綴ったもの。
放浪の途中でオーストラリアに『エグザイルス』ブックストアを作り、
バッグギャモンをして毎日を過ごし、ヘミングウェイやビート詩人に傾倒し、素性を知らない女と情熱的な恋に落ちたりする。詳しくは書かないが酒やドラッグの描写もある。
この本を読んだのは約20年前。彼はハンサムで長身のクールな男なので、自分とは似ても似つかない。だが当時ワクワクする気持ちでこの本を読み、鬱屈とした日常からの脱出を試みた結果がいまの自分だと考えるとその通りだというような気もするし、皮肉だなと思うこともある。
向こう見ずな姿勢と独立心。現場での行動力がとても刺激的。
ロマンを感じるというにはその温度が高すぎるような一冊だった。
アウトサイダーの幸福論
さて、「アウトサイダーの幸福論」だ。
この本は何人かの伴侶との出会いと別れを繰り返し、様々な職業を経験して
晩年に差し掛かった著者の回顧録だ。
若い時期の勢いは影を潜めるが、思案の末にたどり着いたひとつの境地を示している。
それはとても豊かで、円熟した知性を感じさせる。
この本を通して約20年ぶりにこの著者に出会った自分は、若き日の著者が残した影を追い求めた自分を思い起こしながら、さらに先に進み続けた人物に再び出会うことができた。
僕がこの人物から学んだことは自分を卑下したり、意に添わないことを無理にしたりするような時間は人生にはないということ。また、仮に自分がどこかのコミュニティになじめなくても、個を保って漂いながらやっていくことは可能だということ。自分が価値ある人間であることを確認し、その気持ちを持つための思索と行動をすること。である。
エグザイルス(放浪者)がその魂を持ったまま晩年に至る。
そんなことも可能かもしれないなと思うような一冊だった。
思い入れのある本なのでやや主観が強すぎてしまうが、ぜひ2冊通して読んでみてほしい本である。
実は以前からコメディアンのドリフターズがdrifters[漂流者]という意味なのも格好いいと思っている。
いまのドリフターズを見たら、ドリフトし続けた男たちの価値がわかるような気がしないだろうか?
ではまた。
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